6 November 2015

アジアでのサービスデザインの現状 <SDN台湾2015より>

先週、台湾で行われたService Design Network(SDN)カンファレンスには、台湾、中国、日本、韓国、アメリカからサービスデザインの専門家が集まり、アジアにおけるサービスデザインの現状を共有し、今後について議論する場となりました。 Designit Tokyoはこのカンファレンスにおいて、コ・クリエーション・ワークショップを主催し、そしてパネルディスカッションにも登壇しました。カンファレンスにて議論された内容を記事にしてご紹介します。

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関心の高まり

昨今、サービスデザインはアジアでも注目を集めています。サービスデザインに関連するイベントやカンファレンスが、アジア各国で開催されており、多くの参加者を集めていることからも、この分野の注目度が分かります。

そうは言っても、サービスデザイン分野の成熟度や実践例の数から見れば、アメリカやヨーロッパには劣ります。今回のカンファレンスでも中国、台湾、日本、韓国のそれぞれの市場での現状が共有されましたが、組織においてサービスデザインが完全に浸透するには、理論と教育両面から、多くの努力が注がれなければならないでしょう。

一方で、欧米に全く劣らない ケースも幾つか紹介されました。SDN台湾カンファレンスにて発表された中で、素晴らしかったものの中には、目の不自由な方のためのアプリ、バックパッカーの協力によって中国の僻地における教育の現状を改善しようとするプラットフォームなどがありました。

台湾などの特定の地域では、この分野に対する実践知識の醸成と教育に力を入れたい政府の援助によって、日の目を見始めている社会活動もありました。

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文化の壁を克服する

サービスデザインが多くの注目を集めているとはいえ、民間部門はこれらを実践に移すのに苦労しているようでした。たくさんの専門家が、大きな組織内でこういった活動を行う難しさを口にしていました。

アジアは、製造業者を多く抱える製造大陸であり、また多くのアジアの会社が未だにコンシューマ製品に投資し、生産を行っています。サービス業、顧客経験を重視するアプローチへの転換は、現在起こっている最中と言えますが、完全に移行するのはまだまだ先だと言えます。こうしたアプローチの価値は、アジアでも広く認識されていますが、アジアのビジネスにあったスタイルでこれらを取り入れていく術は現在模索中です。

サービスデザインの価値は認められているものの、使用するには従来の伝統的な働き方、確立されてきたビジネスの仕方を変える必要があるので、リスキーだと考えられています。サービスデザインの専門家がまずやるべき事は、意思決定権者を教育し、サービスデザインはイノベーションに付随するリスクを下げるという事を納得させる事です。サービスデザインにおいて不可欠な要素であるリサーチ、コラボレーション、イテレーションは、企業によって開発されたソリューションがユーザー、市場、企業の現状に合ったものであることを確かめるものであり、故にリリース日まで秘密にされているアイディアよりも成功する確率が高いのです。

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方法論を適用する必要性

サービスデザインの方法論を採用するということは、アジアの会社にとって多くの場合大きな資産となります。しかし、この方法論は主に欧米諸国によって生み出され、発展していったため、この方法論の恩恵を最大限享受するためには、自分たちの文化や商慣習に合った形で採用することが求められます。

私たちがDesignit Tokyoで経験した文化の違いの一つとして、リサーチの対象者が比較的オープンでないことが挙げられます。例えば、深層インタビューを実施する時に、日本人は自分が思っている本当の意見よりも、求められている答えを発言する傾向にあります。

今回私たちはカンファレンス内のワークショップで、参加型のリサーチ手法(participatory research)を紹介しました。この手法では、参加者に調査目的で幾つかのクリエイティブ・エクササイズを行ってもらうことで、前述したインタビュー調査などでよく起こる問題を避けることができます。参加型のリサーチは、コ・クリエーションの原則を利用しており、手を動かすことで人々の言動や思考の中にあるインサイトを得ることで、従来の調査手法では得ることができなかったインサイトを見つけることが可能で、インタビューを受ける人の過去の体験や将来への期待といった事柄を、より深く堀り出すことができます。

およそ1時間半のワークショップでは、参加者に3つのクリエイティブ・エクササイズを体験してもらい、自然災害の際の共同作業について彼らが抱く願望、ニーズ、欲求、恐れなどを導き出していきました。Designitが普段クライアントワークで用いる参加型のリサーチ手法をできるだけそのままの状態で再現するために、自然災害の専門家にもワークショップに参加してもらい、専門家ならではのインサイトを、コ・クリエーションのプロセスに持ち込んでもらいました。

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今回は、世界各国から組織の垣根を越えて、非常に熱意のあるサービスデザインの専門家の方々にお会いでき、またアジア全体において、サービスデザインに対する関心、需要が高まりつつあり、サービスデザインの未来が、挑戦的で意欲的なものになるということを肌で感じ取ることができ、非常に刺激のあるカンファレンスになりました。

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