2 June 2017

「人を理解する」ということを理解しよう –  SD Drinks 第1回のレポート

先日、mct Inc.とDesignitが共催しているシリーズイベントSD Drinks(サービスデザインドリンク)の第1回がmct Inc.にて開催され、サービスデザインに強い関心を持つ人々が集まりました。

サービス経済化の進展によって、サービスデザインは、企業のサービスエクスペリエンスの創出、発展、提供を支援する上でますます重要になり、ビジネス領域での勢いを増しています。

しかし日本では、未だサービスデザインは新しい分野です。 サービスデザインの実践者はまだ多くなく、サービスデザインの事例を容易に見つけることは困難な状況です。 SDドリンクは、日本のサービスデザインコミュニティを集結させ、当該分野について共有し、学び、成長させることを目指しています。初回では、mct Inc.のリサーチャーであるエリック・フライさんとデザイナーの石原志保さん、Designit Tokyoのデザイナーであるサンドラ・リンがどのように「人を理解するか」について、それぞれの考えを共有しました。

行動観察

まずエリック・フライさんと石原志保さんがユーザーの行動観察(Observation)をする際に知っておきたい、役に立つ”Do’s and Don’ts(やって良いことと悪いこと)”について共有しました。行動観察は、サービスデザインのプロジェクトにおいて1つの重要なリサーチ手法ですが、そこからインサイトを獲得するためには実践経験とスキルが不可欠となってきます。

行動観察をする方法は決して1つではありません。システム、ユーザー、そのユーザーのコンテキスト、この3つの基本的な要素を考慮し、常にプロジェクトの課題に合ったアプローチを生み出していかなければなりません。

時にデザイナーやリサーチャーは、あらゆる角度からできる限り多くの詳細とインサイトを獲得するために、子供のような純粋な目を持ってフィールドに行く必要があります。逆にある時には、すでにあるアイデアの正しさや不確かさを確認するために、彼らは仮説を念頭に置いてフィールドに出ることもあります。この2つのアプローチの違いは、より広範なレベルのインサイト、あるいはより細かなレベルのインサイト、根本的に異なるインサイトにつながります。どちらか一方を選択することでプロジェクトを方向づけていきます。

行動観察について話すとき、ほとんどの人は、日常の環境の中でユーザーを調査するリサーチャーを想像するでしょう。これは確かに最も一般的なアプローチですが、フライさんと石原さんは、共創のセッションやソリューションのプロトタイプを触っている間に人々を観察することで、補完的なインサイトを得ることができるという点を共有しました。

クライアントも「人」である

ほとんどのサービスデザイン実践者は、人という要素が優れたサービスエクスペリエンスをデザインする上で重要であることに同意するでしょう。それでも、私たちが多くの場合言及している「人」は、エンドユーザーかサービス提供者(スタッフ、責任者、オペレーターなど)なのではないでしょうか。 彼らは確かに良いサービスを創って行くための最も重要な対象者である一方で、プロジェクトの創始者も、常に同一視される必要があります。(そうです、あなたのクライアントのことです。)

サンドラのセッションでは、サービスデザイン実践者がプロジェクトに投資し、開始するクライアントをより深く理解するためのヒントと方法に触れました。

まず、クライアントも感情や願望、偏見や不安など、それぞれの感情を抱えている存在です。そのことを認識しなければ、プロジェクトの成功率を低くしてしまいます。結局、コンサルタント側で働くデザイナーは、自分たちがデザインしたソリューションのオーナーになることはありません。クライアント企業の人々が、そのプロジェクトを実現させた後も、そこから生じる問題などに対し長期的に対応をしていかなければならないのです。だからこそ、プロジェクトの初期段階からクライアントも一緒に関わってもらうことで、ソリューションを実現し持続させることが重要なのです。

クライアント個人として取り組むことが有意義であり、モチベーションが上がるようなプロジェクトにすることはデザイナーの大事な役目だとサンドラは言います。1対1の話し合いや、ふとした時に何気ない会話をする際、彼らにとっての成功とは何か、プロジェクトでモチベーションを感じることは何か、個人的に達成したい目標は何か、などといった質問を聞くことによって、立ち上げメンバーがプロジェクトを担当している間ずっとモチベーションを維持することにつながるのです。

サービスデザインは、本質的に協働的であり、組織のさまざまな部門から複数のステークホルダーが関与します。この総合的なアプローチの代償は、焦点を絞りきれないことやオーナーシップの不足だけでなく、多分野のチームによる様々な意見と優先順位が出てきてしまうということです。ステークホルダーを興奮させるような、プロジェクトにおける共通ビジョンの提供と共創セッションの設計は、サービスデザイン実践者にとって重要な役割です。

あらゆるバックグラウンドを持つ30名の参加者の方々も、セッションの後には食べ物と飲み物を交わしながら、それぞれの考えや経験を話し合う機会を持ちました。第一回目のSDドリンクは、彼らのエネルギーによって成功のうちに終えることができました。

私たちは、Designit Tokyo Labで開催される次回のSDドリンクの開催を心待ちにしています。共有したいストーリーがある、またはサービスデザインに興味がある方は、サービスデザインコミュニティに参加し、飲み物を手に交流を深めましょう!

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