16 September 2015

ドリンクストーミング: 高齢者のためのテクノロジー

Designit Tokyoオフィスでは月に1度、デザイン、テクノロジー、未来に関するトピックについて、お酒を飲みながらディスカッションをする、Drinkstormingを行っています。誰もが参加できるカジュアルなこのイベントは、私たちがデザイナーとして持つ意見を交換する良い場になっています。

今月のテーマは、「高齢者のためのテクノロジー」。現在日本では、65歳以上の高齢者の割合が全人口の26%を占め、今後10年間でこの数字は、さらに増加することが予想されています。テクノロジーはこのような高齢化社会に向けて、現在、そして今後どのように関わっていくのでしょうか。

以下に議論の内容を簡単にご紹介します。

デジタルサービスやテクノロジーと言うと、FacebookやTwitter、Uber、ドローン、オキュラスリフトなどを想像しますが、それらは一般的に高齢者のためにデザインされているものではありません。今では、高齢者の間でもスマホが普及したり、家庭でSkypeを使って孫と会話したり、高齢者向けの出会い系サイトが存在したり、高齢者の周りにもテクノロジーが行き渡っています。しかし、それらのサービスは、もともと高齢者のために作られたものではありませんでした。

「テクノロジーを使ったサービスは、高齢者向けではなく、若い人に向けて設計されている。しかし、高齢者は頑張って使い方を学んでいくことによって、次第に適応していくことになる。」

テクノロジーを保有することと、その使い方を熟知していることは、大きく違います。たくさんの高齢者には、テクノロジーに触れる機会がありますが、それを有効に活用することができていないのが現状でしょう。今回の参加者の一人は、「私の両親はWhatsAppというコミュニケーションアプリを使っているが、音声メッセージしか送らない」とコメントしました。WhatsAppは、テキストや写真のやり取りが主な機能となりますが、この方は留守番電話に似た、昔からの習慣にあった使い方を新しいサービスに活用しています。

もう一人の参加者は、母親が「Wifiって何?インターネットと同じもの?」と聞いてきたというエピソードを紹介してくれました。テクノロジーは、高齢者のためにデザインされていないため、多くの高齢者の方がきちんと理解していないまま使用していることが多いです。また、多くの場合、新しいテクノロジーは、彼らにとってある種の恐怖を感じるものでもあるのです。「私のお母さんは、パソコンを壊すのが怖いので、パソコンを使いたくないと言っている」と他の参加者は発言していました。

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多くのデジタルサービスは、高齢者の気持ちを汲み入れておらず、あらゆる年齢に対応したサービスとは言えません。

「若者と違って、新しく、おもしろいからと理由で、高齢者はテクノロジーを利用しない。」

離れた家族と連絡を取り合ったり、役に立つ情報を閲覧したり、高齢者にとっては、テクノロジーを使うための明確な理由が必要なのです。

「歳を取れば取るほど、人は変化を恐れるもの」

若いときは、あらゆることを新しく感じ、色々なことを自分のものとして吸収することができますが、歳を取ればそれは難しくなります。新しい操作方法を要求するテクノロジーと触れ合うのは、高齢者にとって、とてもハードルが高いことなのです。

デザイナーとして、私たちは現実世界にあるものをメタファーとして使用し、このハードルを下げることができます。コンピューターが家庭に導入されたときには、ウィンドウ、フォルダ、ゴミ箱といったような現実世界の道具がインタラクションのメタファーとして使われました。(このテクニックは、スキューモーフィズムと呼ばれています。)

もう一つの方法は、テクノロジーをより直感的に使いやすくすることです。デジタルインターフェイスの均質化、そしてゼロUIへといった動きは、どんな人でもテクノロジーを使いやすくする方向性を示しています。タッチスクリーンは、マウスやキーボードより、より直感的なインタラクションですし、声やジェスチャーによる制御は、更に人間的で自然なインタラクションであると言えるでしょう。

結局、テクノロジーの進化によって、私たちがテクノロジーと触れ合う方法はより直感的になっていきます。(近い)将来、すべてのテクノロジーが究極的に直感的で使いやすいインターフェイスを提供することになった場合、「テクノロジーを高齢者にも使いやすいようにする」というのは、もはや議題ではないのかもしれません。

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テクノロジーやデザインというのは、本来人々の問題を解決するためにあるものです。高齢者のためのテクノロジーというと、私たちは真っ先にヘルスケア分野での活用などを考えるのではないでしょうか。現在では、ロボットが高齢者の身体的援助、精神的援助を担っている事例もあります。

「ロボットは、どの程度人間に成り代わり、人の世話をすることができるのか?」

ヘルスケアの他に、高齢者のためにテクノロジーを活用している分野はあまり見当たらないように思えます。UberやTinderは、若者の日々の生活を便利にしたり楽しくしたりするサービスですが、高齢者のためのそういったサービスは少ないでしょう。それは高齢者がテクノロジーを熟知していないためなのでしょうか。

「高齢者が、自身が抱える課題に焦点を当てた商品やサービスを買ったり、使ったりするのは、心理的にも社会的にも抵抗がある」

誰も自分が高齢者だと認めたくはないでしょう。もしかしたらテクノロジーを使ったサービスは、高齢者の特定の課題にフォーカスしない方がいいのかもしれません。むしろ、彼らがより楽しく、充実した生活を送れるよう活気を与える役割を担った方がいいかもしれません。

例えば、多くの自由時間がある高齢者にとって、誰かの役に立つということは大事なモチベーションです。高齢者のためのデジタルサービスを考えるのであれば、彼らが今までの人生の中で培った技術や経験を、他の人を手助けするため活用する仕組みを作ることが大切ではないでしょうか。その結果として、高齢者に社会との新たな繋がりを生むことができれば、素晴らしいサービスとなるでしょう。

こういった高齢者の背中を押してあげるサービスが、今後たくさん出てくることを願って、今回のブレインストーミングは締めくくりとなりました。

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参加者の皆さまに感謝致します。 フランクで自由闊達なディスカッションとなり、あっという間に時間が過ぎていく素敵なイベントになりました。次回のDrinkstormingでも多くの方とディスカッションできるのを楽しみにしております。参加者を希望される方はtokyo@designit.comまでご連絡ください。

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