11 August 2015

ドリンクストーミング: テクノロジーと職人技術

Designit Tokyo オフィスでは月に1度、お酒を飲みながら、デザイン、テクノロジー、未来に関する興味深いトピックについてディスカッションをする、Drinkstorming を行っています。このカジュアルなイベントは、私達がデザイナーとして創っている世の中の不安、欲求などの意見を交換する場所を提供できる最適な機会です。今月のテーマは、テクノロジーの発展における職人技術の立ち位置で、職人技術は消えていくのか、それともテクノロジーによってさらに強まるのか、どのような形で変化していくのかを議論しました。
以下が主な議論の内容です。

「私達の世界は新と古が同居している」

Googleマップで近くのクラフトビールバーを探したり、丁寧に焙煎されたカフェラテをインスタしたり、浴衣の着付けをYouTubeで学んだり…

テクノロジーと職人技術は一見、正反対のものであるように見えます。ただし、私達は1時間半のディスカッションを経て、テクノロジーと職人技術は互いに足りないところを補完し合い、作品を良くするために使われているため、両者の境界線をはっきりと引くのは難しいと感じました。

日本は、古い寺院や神社と真新しい高層ビルなど、モダンと伝統の同居が顕著で、新と古、最先端の技術と職人技術が共存しています。

急速にテクノロジーが発展していくにもかかわらず、職人技術は完全に消えていきそうにありません。では、いったい何が職人技術の価値で、なぜテクノロジーが進歩していく世の中でも必要なのでしょうか。

「機械が取って替われないところに職人技の価値がある。」

目の前に、大将が手で握った寿司と機械によって作られた寿司の両方があるとします。目をつぶって食べてみて、違いを当てるのはなかなか難しいかもしれません。これまで産業や技術革新によって、多くの職人は機械に仕事を取って替わられ、機械で作られた製品のクオリティーのほとんどが職人技術と同じか、それ以上になることもありました。

しかし、環境の考慮や、主観性を持って変化をつけること、個人の好みを理解し、それに合わせてモノを作ることは機械には難しく、その点は人間のほうが優れている場合もあります。例えば、寿司屋の大将がご飯の量や具材をお客さんの好みや食べっぷりに合わせたり、ミュージシャンが観衆や自分の気分に合わせてアドリブ演奏を行ったりするといったことです。 Appleが、ニュースや音楽サービスの編成にアルゴリズムだけに頼らず、人手を使っているのにはこういった背景があります。

機械は色、形、品質にむらがなく、毎回、同じ物を作るようにプログラムされているので、製品をコンスタントに作り続けることには適しています。皆さんも、スーパーで売っている石鹸やお米の品質がばらついていたら、買いたいとは思わないと思います。しかし、職人技術が、機械に勝っていることが一つあります:それは”個性”を生み出すことです。大型量販店で見かけるお皿の品質は全て同じですが、一方で、陶芸屋で見る手作りの急須はそれぞれの色や形が異なっています。これはワインなどの酒造にも言えることで、年ごとに良悪両方の意味で味が異なり、酒造りを面白く、楽しくするのです。

職人技術は人間の不完全さの中にその美しさを見いだします。不揃いのお皿は独特な手触りと個性を生み出します。ミュージシャンの中にはこのようなユニークな楽器を好む人が多くいます。その楽器が、アーティストの身体やテクニックスタイルに合っていなくても、その人の個性との出会いによって、演奏に面白みが出るのです。

魂のこもった製品VS. 規格化された製品。AI技術がさらに発展し、近い将来にはAIが物事の文脈や行動要因を踏まえ、それぞれに適した行動を取るようになるでしょう。ロボットが購入履歴や顔、感情認識機能を使って自分の好みや気分にあったコーヒーを入れてくれたらどうでしょうか?もしくは音楽の世界でいったら、ロボットが技術的に人間より優れ、さらには観客に合わせて即興演奏してくれるようになるかもしれません。

「味が同じでも、やっぱり人の作った寿司がいい。」

職人が作った寿司の味が必ずしも機械に勝っていないとしたら、職人技術の価値とは何なのでしょうか。

「職人技術の価値はそのプロセスに人の意思や、人の技術が蓄積されていること。」

職人技術の価値は精神的、感情的なところにあり、これらは人が語るストーリーの中に見ることができます。大工が手で作った椅子と工場で大量生産の機械で作られた椅子とを比べてみましょう。両者は同じ木材からできていますが、手作りの椅子は工程にかかるコストが大量生産の椅子よりも高くなります。しかし、コストが高くても人が手作りの椅子を選ぶのは、手作りの椅子の付加価値が、実体のないストーリーの中に存在し、人々の心を惹きつけるからです。

時には、製品の実体のそのものよりもストーリーを重視した過剰な演出が されることもあります。”ニセ職人技”と呼んでいる人たちもいますが、例えば、大型量販店や飲食店などで、実際には規格化され、産業化された製品であるのにもかかわらず、意図的に職人が作ったような、伝統的な商品やお店のように演出をしているケースもあります。しかし我々は喜んで、体験の方を重視し、その小さい嘘に付き合っているのです。

「プロダクトがデジタルアプリケーションやサービスの意味を含む言葉になった今、職人技の概念は今後どうなっていくのだろうか」

職人技術はどのようにデジタルの世界で変化していくのでしょうか。私達はエンジニアやデザイナーも”テクニカル・クラフトマンシップ”がある、 と考えました。プログラミングのコーディングを取ってみても、個人のスキルを必要とし、正しいやり方に従っているか否かで、いいコード、悪いコードという言い方があります。デザイナーもそのモノづくりの背後で、正しいプロセスに沿って、使う人のために最善のアウトプットを行う努力をしています。

「モノづくりの道具はより技術的になっていくが、その背景に職人技術があることには変わりがない。」

グラフィックデザイナーはペンと紙を捨て、Adobe Illustratorを使い、ミュージシャンはPCやミックス・テーブルを使うようになりました。しかしながら、彼らは、よりよい作品を作るために確かに技術を磨きインスピレーションを広げています。

職人技術はテクノロジーの発展とともに、これからも洗練されていくことでしょう。
現在、私達が考える職人技術も、昔は革新的な技術として捉えられていたことでしょう。今最新技術だと認識されているものも、未来では職人技術だと言われているかもしれません。人間の意志と人間の技術がモノづくりの裏にある限り、職人技術は生き続けることでしょう。

参加者してくださった皆さま、誠にありがとうございます。
ディスカッションも盛り上がり、素敵なイベントになりましたことを心から感謝申し上げます。次回のdrinkstormingでもいろいろな方とディスカッションできるのを楽しみにしております。参加者を希望される方はtokyo@designit.comまでご連絡ください。

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