6 July 2016

ボットの時代へようこそ

Designit東京では時々、美味しいお酒を囲みながらデザインやテクノロジー、そして未来に関する旬な話題についてのディスカッションを行っています。私たちがドリンクストーミングと呼ぶその方法は、デザイナーである私たちが日々作り出そうとしている未来の世界に対しての、期待や恐れ、そして考えを表現し、交換する上で非常に優れたものです。先週のディスカッションでは、 あらゆるプロダクトやサービスにおける AI(人工知能)、そしてボットの台頭をテーマに話し合いが行われました。その際の内容を、少しご紹介しましょう。

Siriから始まり、AmazonのアレクサやGoogle Now、そして最近のFacebookメッセンジャーまで、私たちは単純な好奇心から彼らと会話し「遊んで」きましたが、一つだけ確かなことがあります。それは、そこにテクノロジーが存在しないということです。ボットは楽しく、また驚きに溢れていて時に便利ですが、しかし今日彼らが私たちにしてくれることには確実な限界が存在します。

料理中にタイマーをセットするといった非常に特定されたタスクに関して、声の指示によって人工知能のようなアシスタントの助けを借りることは便利かもしれません。しかし、それは本当に「知能」と呼ばれるべきものなのでしょうか?それは単純なタスクに関する、より早く効率的な「指示」を可能にしますが、そこから生まれる「結果」(もし指示がうまく理解された場合)は、今までと何も変わりません。

「なぜ人工知能がジョークを言う必要があるのか理解できないな。それって、 彼らに求めている『効率』の邪魔になりかねないよ。」

快適なインタラクションや、テキストや音声などを通じた人間のような会話が必要な際に、本当に機械は人間になる必要があるのでしょうか。つまり機械に対してより人間的に接し、指示を出すからといって、機械の方も人間のように振る舞う必要はあるのでしょうか。私たちは機械に対して効率的かつ正確にタスクをこなし、毎回同じような結果を出すことを期待しますが、機械に人間のようなパーソナリティを与えるという事はこれを妨げかねません。「過ちは人の常」だからこそ、私たちは機械を必要とするのです。

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「AIには 『効率的にタスクをこなす』または『人間のように振る舞う』といった 2つの使い方がある。でも、その2つは全く別のものだよ。」

この2つが、今までのインターネットの使用方法を二分してきました。私たちは、チケットの予約やアジェンダの管理といった効率性のためにネットを利用する一方で、ソーシャルメディアや動画などの娯楽に、数え切れないほどの時間を費やしてきたのではなかったでしょうか。これは、ボットについても同じことです。効率的にタスクをこなすのを助けてくれるボットがあれば、楽しく暇をつぶすためのボットも存在します。これら2つの役割はそれぞれ重要なものですが、デザインの仕方もそれぞれ違うということに注意しなければなりません。

効率化して時間を節約したい際には、あなた個人について理解し、支払いやその他様々なものに関する情報にアクセスすることができるAIを持つことは非常に役に立つでしょう。たとえば飛行機のチケットを買いたい際には、あなたが窓側の席を好み、安さよりも速さを重視することを考慮した上で、AIが数分以内で最適なプランを提案してくれれば素敵ではありませんか?このような場合、あなたが必要とするのは効率性と信頼性であって、ジョークと人間性だとは限りません。

もしもなんとなく電話を使って、何か面白いランダムな発見を求めているならば話は別で、全く違った性質を持つボットが必要となるでしょう。このような場合には、パーソネリティを持って人間のような言語を話し、何か面白いものを提供してくれるボットが良いかもしれません。ジョークを言ってくれれば楽しいし、何を答えられるのかと言った限界を試してみたいと感じるかもしれません。しかし本当に問題なのは、ボットが私たち人間の感情を本当に理解してくれるというのは何か変で、その上不可能に思えるということです。共感とは複雑な物で、私たちの感情に従って反応してくれるAIをデザインできるとはあまり思えません。

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「すべてのビジネスにおいて、ボットを開発する必要があるのかな?」

すべてのeコマースのウェブサイトに、バーチャルなアシスタントを用意する必要はあるのでしょうか。またすべてのビジネスがFacebookメッセンジャーでボットのサービスを開始したり、ウェブサイトからGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)を排除して会話型に移行させたりするべきなのでしょうか。カスタマーは本当に、自動運転車やATM、または冷蔵庫と会話をする必要があるのでしょうか。

iPhoneブームに続いて全てのブランドがアプリを作り始めたように、これからはボットを利用したサービスがあちこちで現れるのを目にすることでしょう。しかし、全てのビジネスが必ずしもアプリを必要としないことを、そして目的よりもテクノロジーのトレンドを優先した先に生まれるのは、効率性ではなくコストであることを私たちは知っています。ではいつ、どのような場所で本当にボットが必要となるのでしょうか?

ボットが、今までの辛くて退屈な、手間のかかる仕事を引き受けてくれるというのは、その可能性の一つです。もし、コールセンターをボットで代用できたとしたらどうでしょうか?それはたくさんの労働者を不満な仕事から解放してくれるだけでなく、同じ仕事をより正確に早くこなすことで、今まで以上の顧客体験を生み出します。一人の参加者によれば、みずほ銀行などではすでにこの方向が進められており、AIによるコールセンターの実装が開始されてるそうです。

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「機械に話しかけるのはまだ違和感があるよ。今のところ、どうやってこれを実現させればいいのかは良く分からないな。」

今のテクノロジーの限界によるものかもしれませんが、私たちが機械と人間のようにコミュニケーションするのはまだ違和感が残ります。言いたいことを、機械が理解出来るように合わせて話すのは本当に正しい事なのでしょうか。音声ではなくテキストでさえも、 スペルミスや省略、ジョークなどが通じないことで、私たちは実際に人に話しかけているのではないことを思い出します。

この違和感が、人とボットとの間の本当の問題を生み出しています。私たちを正しく理解してくれないプログラムを、どのように信頼しろというのでしょうか。そのような誤解(もしそう呼べるのなら)によって、私たちはボットに指示した内容がベストな方法で実行されるとは信じられなくなってしまうのです。Siriが正確な時間にタイマーをセットしてくれると信じることさえも難しいのに、どのようにして正確な航空券を買ってくれると信用できるのでしょうか?

会話型のインターフェイス開発に携わった一人の参加者が、ユーザーによるシステムのテストしている際に見つけた驚くべき発見を共有してくれました。それは、人間と会話をしていると信じていた人が、実際はボットだったと気づいた瞬間騙されていたという感覚を強く覚えたというものです。どうやら、私たちはまだ実際に人と接している際に、より理解され、気にされていると感じるようです。

「あなたなら、どのようにAIをデザインしますか? 」

ボットの出現は、間違いなくどのようにデジタルなプロダクトやサービスをデザインするかということに変化をもたらします。それでは、私たちは実際にどのように会話をデザイン出来るのでしょうか?今までのデジタルデザインとは何が異なっていて、どんなスキルが要求されるのでしょうか?

まず始めに、それはボットの“賢さ”という点における、技術的な発展に大きく左右されるものです。 例えば、もし私たちが真の自然な言語で処理や返答できる高い技術に基づく人工知能について話すとしたら、それにおけるデザインというのは、おそらくどのようにインタラクションを起こすかのガイドや基準を考えるということになるでしょう。言い換えれば、デザイナーは全ての一つ一つのインタラクションをデザインするということはできないけれども、ボットに対して、ある境界線、ルールを与えたり、ボットを休ませてあげるたりすることはできるということです。つまり、それはボットの性格の基礎の設定をするということかもしれません。

また、もっと低いレベルの技術によって、本当の“ボット”ではなく単純な会話できるインターフェースを作ったとき、その場合のデザインというのは基本的なUXデザインに似たものになると考えられます。すなわち、全てのユーザーシナリオを描き、それらのシナリオにもっとも合うインタラクションをデザインする、ということです。

今までのGUIsとの違いは、視覚的要素ではなく、言葉を使ったインタラクションの形にあります。 ユーザーがAと尋ねたら、ボットがBまたはCと答えることができる。もしユーザーがBを選んだら、ボットはD、Eまたはその他のことが答えられるという具合です。そのプロセスはまるであらゆるインタラクションを使った、“会話の樹形図”を作り上げているようにも思えます。

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Designit東京のチームより、すべての参加者に心より感謝を申し上げます。私たちとのディスカッションを楽しんでいただき本当にありがとうございました。また、私たちはいつでも新しい参加者を歓迎しています。ドリンクストーミングに興味のある方は、Designit東京までメールにてご連絡下さい。tokyo@designit.com.

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